萎縮性胃炎とは萎縮性胃炎とは、胃粘膜の萎縮(胃腺の減少や粘膜の薄化)が生じた状態を指します。主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌の長期感染であり、ピロリ菌による慢性炎症が数十年にわたって続くことで、胃粘膜が徐々に萎縮していきます。萎縮性胃炎自体には特有の自覚症状がないことが多く、内視鏡検査や血液検査(ペプシノゲン検査)で発見されることが一般的です。胃もたれや食欲低下などの症状を伴うこともあります。萎縮性胃炎は胃癌のリスク因子として重要萎縮性胃炎が臨床的に重要視される最大の理由は、胃癌発生のリスク因子となることにあります。萎縮性胃炎が進行すると、胃粘膜に腸上皮化生(胃の粘膜が腸の粘膜に似た組織に置き換わる変化)が生じることがあり、この状態は胃癌の発生母地となりえます。萎縮の範囲が広いほど、また腸上皮化生の程度が強いほど、胃癌のリスクが高まるとされています。そのため、萎縮性胃炎と診断された場合には、定期的な内視鏡検査による経過観察が重要です。萎縮性胃炎は「胃の砂漠化」?胃の粘膜が薄く、弱くなるメカニズム「胃の粘膜が薄くなっていますね(萎縮)」と言われたら、それは単なる老化ではなく、「ヘリコバクター・ピロリ菌」による長年の攻撃の跡かもしれません。 ピロリ菌が胃に住み着くと、数十年にわたって慢性的な炎症を引き起こします。すると、本来はふかふかで厚みのある胃の粘膜が、炎症によって破壊され、徐々に薄くペラペラになっていきます。 さらに進行すると、胃が自らを守るために、胃の粘膜を腸の粘膜のような性質に変えてしまう「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」という現象が起こります。これは、胃が本来の消化機能を失い、表面がデコボコと荒れた「砂漠」のような状態になることであり、胃癌が発生しやすい危険な土壌が完成してしまっていることを意味します。自覚症状がなくても危険!「注意すべき兆候(レッドフラグ)」萎縮性胃炎の怖いところは、必ずしも強い痛みがあるわけではない点です。しかし、以下のサインや健診結果が出ている場合は、胃癌リスクが高い「厳重注意」の状態です。胃癌リスク検診(ABC検診)で「B・C・D群」: 血液検査で、ピロリ菌感染があり、かつ胃の萎縮が進んでいると判定された場合。食欲不振・胃もたれ: 胃酸を出す力が弱まり、消化機能が低下して「食べられない」状態が続いている。貧血(ビタミンB12欠乏): 胃の粘膜が極端に萎縮すると、ビタミンB12を吸収できなくなり、特殊な貧血(悪性貧血)や神経障害を起こすことがあります。以前にピロリ菌を除菌した: 除菌しても、薄くなった粘膜や腸上皮化生はすぐには元に戻らないため、リスクは残っています。「除菌」で炎症を抑えて「カメラ」で見張る萎縮性胃炎対策の鉄則は2ステップです。 まずは、「ピロリ菌の除菌」です。これにより、胃粘膜への炎症を食い止め、これ以上萎縮が進行するのを防ぐことができます。除菌が成功すれば、胃癌のリスクは確実に下がります。 しかし、一度「砂漠化(腸上皮化生)」してしまった部分は、除菌後も癌が発生しやすい状態が続きます。だからこそ、消化器内科で年に1回「上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)」を受け、癌の芽が出ていないかを監視し続けることが不可欠なのです。「除菌したから終わり」ではなく、「除菌してからが本当の管理の始まり」と考え、定期検査を習慣にしてください。